経済発展との因果関係

およそ一国の発展には、熟練労働者群、企業家階層、テクノクラート集団を創成し、インフラを整備し、市場経済の発達をうながすなど、困難な課題に取り組むことが必要である。これら諸課題にたち向かう国民的営為のすべてが、すなわち「自助努力」にほかならない。一国の発展過程において外国援助が演じうる役割は、量的にのみならず、そもそも本質的なところで副次的なものたらざるをえない。

政治的にであれ経済的にであれ、いかにきびしいコンディショナリティーをつけて懸命の援助努力をしたところで、マクロ構造のみるべき改善がほとんどみられないラテンアメリカ諸国の実情のなかに、そのことが端的に示されている。逆に、経済開発過程において熟練労働者を創出し、企業家とテクノクラートを鍛え、輸出志向工業化に向けての政策体系を整備してきた東アジア諸国は、与えられた援助をみごとに使いこなして高成長を実現しえた、対照的な事例である。

援助(を含む外国資本)と一国の経済発展との因果関係を究明し、そこに自助努力がどのような関わりをもったかを分析的に明らかにすることは、もちろん容易ではない。しかし、外国資本への高い依存度をもって経済開発をスタートさせた一国が、その開発過程で外国資本を国内貯蓄によって代替させながら、なお高成長を持続したとするならば、この事実は、すぐれた自助努力により外国資本を有効に用いつつなされた「サクセスストーリー」だと評価することは可能であろう。

アジア諸国は、たしかにそうしたタイプの国ぐにから構成されている。日本の援助は、長らく東アジア諸国に集中的に供与されてきたのであり、すなわちこの地域諸国の開発経験は、援助と自助努力という文脈設定の有効性を如実に示すものだ、ということができよう。