高度成長時代の象徴である国土総合開発法

過去四次にわたる計画にしたがって行われた「むつ小川原開発計画」の失敗、都市再開発によって引き起こされた地価の高騰と都市の破壊、「全国一日交通圏」によって強行されているムダの多い新幹線や高速道路網の建設など、振り返ってみれば全総の功罪のうち「罪」の大きさに圧倒される。これは政策犯罪とさえいえるのではないか。

戦後復興、高度成長時代の象徴である国土総合開発法は退場のときである。そのうえで、これまでは官僚がごくアウトラインだけを書き、閣議や大臣が密室で自動的に承認を与えていた「五ヵ年計画」を詳細にして、国会の場に引っ張り出し、国民に見えるようにしなければならない。

そこで、今後は十六の「五ヵ年計画」には次のような事項を記載すべきである。五年ごとに国会の承認を必要とすること。途中で変更する場合も同じ。これまでも、「五ヵ年計画」の道路整備緊急措置法のような根拠法は時限立法であり、更新には国会の議決が必要だったが、計画の中身がわからないままに、官僚主導で年次だけがほぼ自動的に更新されてきた。

私たちの提案は、具体的な中身がわかるように詳細にした計画そのものを議決にかけるので、本質的な違いがある。政府が十六の「五ヵ年計画」に盛り込んで提出する内容は次のようにする。年度ごとの、国、自治体、特殊法人などその他の事業主体の計画(各年度ごとに要する費用の額、一般会計、補助金、その他の額も明示す)。高速自動車道、ダム、空港など大規模な事業については、具体的な地点と事業規模などを明示する。

これによって、国会に提出された計画は、金額などをふくめて具体的な内容がだれの目にも見えるようになる。とくに、個別の事業と地域と予算を明確にした審議は、国民の目を国会に集中させるだろう。たとえば、整備新幹線の計画と予算は、地元出身議員によって強力に推進が唱えられるが、全国民的な視点から否決されるというような事態が続出することになるからである。