失業率低下と財政黒字

米国経済の優位は、特に日本との対比によって際立つたかたちで表れている。わずか十年前まで「アズ・ナンバーワン」の高みから「怠け者の大男」と、米国を見下すようなそぶりを見せていた日本に対して、劇的ともいえる再逆転を演じているからである。

何より。失業率が下がっている。すでに九七年には、当時三・五パ−セント程度だった日本より失業率の低い州がネブラスカ(二・三パーセント)など十二になっていたが、九九年には全米平均で四・ニパーセント程度。

九二年のピーク七・五パーセントから七年連続の低下(二〇〇〇年一月は四・〇パーセント)で、三十年ぶりの低水準である。二〇〇〇年二月現在四・九パーセントの日本と完全に逆転してしまった。この失業率低下と、インフレ率低下が並行して進んでいるところに、今日の米国経済の強味がある。

加えて、財政の黒字への転換。七〇年代から八〇年代にかけて米政府は、毎年のように財政赤字の黒字転換の目論見を予算教書とともに提示した。しかし黒字転換のめどとされた年度は、毎年砂漠の逃げ水のように先へ先へと送られていた。つまり米国民と世界に向かって、毎年嘘をついていた。

しかし、米国財政はついに九八年、二十九年ぶりに黒字に転ずる。二〇〇〇年二月七日、米議会に提出された二〇〇一会計年度(二〇〇〇年十月−ニ○○一年九月)の予算教書に付された長期見通しによれば、黒字を毎年債務削減にあてていくことによって、二〇一三年には二〇〇〇年現在約三兆六千億ドルに達している累積赤字をゼロにするという。

円をますます引き離す国際通貨ドル米国経済力の優位を総括的に示すのは、米ドルが文字通りの世界通貨となったことである。七一年八月十五日の「ドル・ショック」は、米国経済の地盤沈下を反映し、西独や日本の経済力伸長を両国通貨の切り上げというかたちで顕現するものだった。

第二次大戦後の国際通貨体制(ブレトン・ウッズ体制)の基軸となっていた金・ドル平価システムは、ドルの対金価格が維持できなくなり、「いつでも金との交換に応ずる」という金・ドル交換性が放棄されたため崩壊した。七三年三月以降は、いわゆる「変動制」に移行して今日に至っている。